吉田悠樹彦、音楽舞踊新聞平成17年12月1日号

技術力の高い踊り手である。

シャープでスピード感溢れるムーブメントが特色といえる作家であるが、その演技力の幅の広さと資質の高さにも注目すべきものがある。

そんな踊り手がミステリアスな表情で空間を演出したかと思えば、内面に集中し肢体の切り出す動きの各瞬間に明確な表情とアクセントを刻み込んでいく。

 

吉田悠樹彦 (舞踊批評家)

幸内未帆は何よりスピード感あるアグレッシブな新世代のコンテンポラリーダンスを見せる作家だ。

90年代以後に台頭した日本のコンテンポラリーダンスの1つの傾向ともいえる「演劇的」なスタイルの作家たちや舞踏出身の踊り手たちと一線を画した作品を創るアーティストである。

 

オタクや「萌え」、秋葉系といった日本のイメージが外国で日本文化として流通をしている昨今だが、作家はポストモダンダンスやコンテンポラリーダンスの技法を用いることで、経験豊かな踊り手から市民 まで幅の広い現代の東京人の肉体と向かい合ってきた。

例えば幸内が主催をするNR6は固定メンバーによるカンパニーではなく、あくまでも作家が作品創作にあたり様々な経験とスキルを持ったダンサーをピックアップすることで生まれるグループだ。

NR6は情報化とグローバリゼーションの真っ只中の東京において、東京人の意識を切り出してくる。

 

作家はその創作に対して「ダンスを通して観客に潤いと安堵を与えるようなものを提供し続けたい」と述べる。

そのダンスは鍛えられた踊り手たちのみならず、幅の広い層の芸術家や市民の間に浸透していきそうな要素を持っている。

かつてのポストモダンダンスのようなパフォーマーや市民を用いる様なスタイルにとどまらず、見る側にも作品を演じて踊る側にも心暖まることから潤いや癒し、そして感動を与えていく様な側面もあるのは事実だ。

 

幸内はダンサーとしても多くの舞台 に客演することを通じて演技力に確かな定評を持っているアーティストである。

近年では二見一幸や箱田あかねの作品で客演をし、幅の広い演技力でオーディエンスの喝采に応えていた。東京での活動が切り開く新しい地平が楽しみだ。

 

Asia-Pacific Channels2006より(PDF)